目からウロコの外交営業

目からウロコの外交営業目からウロコの外交営業
瀧藤 圭一 著
2006年12月01日発売
出版社名:ゼンドラ株式会社
価格:3,990円
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はじめに

「彼を知りて己を知れば、百戦して殆[あや]うからず。」
有名な孫子の兵法にある一節です。今から2500年も前に書かれた兵法書でありながら、その合理的、科学的な考え方のために、現在のビジネスにおいても、その戦略的発想のよりどころとして、今なお活用されています。
では、先の一節の続きをご存知でしょうか。実は、この続きがとても大切なのです。

「彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎[ごと]に必ず殆うし。」

相手の実状も知って自己の実状も知っていれば、百たび戦っても危険な状態にならない。相手の実状を知らずに自己の実状だけを知っていれば、勝ったり負けたりする。相手の実状も知らず自己の実状も知らなければ、戦うたびに必ず危険に陥る。

これを外交営業にあてはめると、どうなるでしょうか。

お客様のことを知り、外交を正しく理解しておこなえば、お客様が獲得できて、売上げも順調に伸ばせることができる。しかし、お客様のことを知ろうとせず、テクニックだけで外交をおこなえば、売上げは上がったり下がったり不安定な状態に陥る。更に、お客様のことを知ろうともせず、外交を正しく理解もせずにおこなえば、お客様を獲得するどころか、外交自体が破綻する。

つまり、大切なことは、お客様をよく知ることであり、外交営業を正しく理解することなのです。そうすれば、売上げも順調に伸びていくということなります。

お客様の所に伺い、お預かりして、そしてお届けする。外交営業は昔からクリーニング業における基本の営業形態でした。特に住宅が散在する地方都市にとっては、なくてはならない存在です。もちろん、都市部においても、従来の外交はもとより、新しい営業スタイルによる外交システムも加わり、売上げ獲得の新たなチャンネルとして、再び注目を集めてもいます。
ところが最近、「売上げが思うように上がらない」と外交営業をおこなっている方から、よく聞くようになりました。もちろん、クリーニング業界自体の低迷もあるのですが、それにしても売上げが伸びないというのです。
色々試してはいるけれど、努力もしているのだけれど、思ったようには伸びてくれない。それどころか、外交営業は難しいとさえいわれます。
もちろん、外交営業をおこなっている所では、総売上げに占めるその割合が、かなりの比率を占めています。今後の社会状況を考えると、その割合は増えることがあっても、減ることはないでしょう。その大切な売上げが伸びていない、いや、下手をすると下がっている所すらあるというのですから、ことは重大です。

外交営業が難しいといわれる原因は、実は外交営業が持つその特殊性にあったのです。

外交営業は、クリーニングする品をお客様の所へ取りに行き、クリーニング処理を施し、そして再び届けに行く。お客様の所へ二度伺います。一回の取引に、必ず二度、お客様の所に伺わなければなりません。お届け時に次の品物を預かることが多いので、二度伺っているという感覚は少ないのですが、基本的には必ず二度伺わなければ、外交営業は成り立ちません。
他の物品販売業やサービス業であれば、電話やネットで注文を受けることができます。注文をわざわざ取りに行くことがありません。つまり、一度で済みます。しかし、クリーニングの外交営業は、クリーニング処理をする品物を取りに行かなければ、処理をおこなうことができません。取り扱うものが、お客様の品物だからです。
クリーニング業は、今さらいうまでもなく、製造業でもなければ物品販売業でもありません。そこで取り扱うものとは、製造業のように作るわけでもありませんし、販売業のように仕入れるわけでもありません。それらはすべて、お客様からの預かり品です。その預かり品に、「クリーニング」という一種の加工を施すわけです。つまり、クリーニング業とは、お客様から預かった品に加工を施す、委託加工業ということになります。もちろん、お客様から請け負うわけですから、請負業でもあります。
お客様から預かる服は、その素材から始まり、デザイン、付属品と、それこそ千差万別です。その上、お客様それぞれの着用状態(使用状況)も異なるとなれば、まったく同じ物を取り扱う事は、非常に稀になります。これらの日々複雑化する素材やデザインの服、汚れ方も異なる服に、最適なクリーニングを施さなければなりません。そこには、お客様からの預かり品だからこそ気をつけなければならないことや、多様な服に対応していくために、より詳しい知識と高い技術が必要になることはいうまでもありません。
ましてや、お客様の究極の要望とは、クリーニングすることで新品の状態に戻して欲しいということですから、永久にお客様の要望に100%応えられることもありません。それにどう近づけるのか、交わることのないお客様の欲求とどう折り合いをつけるのか、お客様と直に接する外交営業は、より難しい応対を求められます。

そしてもうひとつ。
お客様のことが、わかっていなかったのです。

まず、お客様がクリーニングに出す目的がわかっていません。なぜお客様がそう考えるのかもわかっていません。どうしてそういう行動をとるのかもわかっていません。ましてや、外交営業においてのお客様とは誰なのか、それすらわかっていません。つまり、何ひとつわかっていないのです。
問題は、お客様に合ったセールス活動をおこなってこなかったことです。お客様のことが何ひとつわかっていないのですから、できるわけがありません。お客様が何に興味を示すのか、何を嫌うのか、それがわからなければそのお客様に見合ったセールスができないではありませんか。
お客様がわかってこそ、それにあった戦略ができます。戦略が決まればこそ、どういった戦術(方法)を用いればいいのかが決まります。つまり、いちばんの大元である“お客様がだれなのか”がわからなければ、セールスなどできやしないのです。もちろん、お客様が獲得できなければ、売上げを伸ばせることなどできるわけがありません。
外交営業は、これまでまったく的外れなセールス活動をおこなってきたことになります。

お客様もわからず、クリーニング業がなんであるかも理解できていない。まさに、「彼を知らず己を知らざれば・・・」の状態ではありませんか。

クリーニング業は、クリーニングというサービスを提供するために、他のサービス業と同じように考えられてきました。外交営業においても、直接お客様の所に伺うのですから、一般の訪問セールスと同じと考えられてきたのです。
そのため、これまで一般にいわれているセールス活動と同じことをおこなってきました。何も知らなかったのですから、そこに疑問を挟む余地などありません。
セールスを頑張ってみても、お客様を獲得できず、売上げが伸びません。思ったほどの成果を出すことができないのです。自身の未熟さを責め、ひとえに勉強不足を反省します。そして、悩み続けます。だからといって、いくらセールスについて勉強をしても、それほどの効果がでるというわけでもありません。
それなりの努力をしても結果につながらない。外交営業はやっぱり難しいと、つい思っても無理からぬことです。
しかし、お客様が獲得できない、思ったような売上げを上げることができない、この原因は、一般のセールスの常識にとらわれすぎていたからです。一般のセールスの方法が、クリーニングの外交営業には合っていなかったのです。
もちろん、巷にあふれるセールスの常識や、多くの指南書に書かれてきたセールスのやり方は、決してまちがいではありません。但し、他の業種において、です。
ことクリーニングの外交営業に関しては、その特殊性のために、それらのセールスのやり方が当てはまることの方が少ないのです。いや、それどころか、ほとんど通用しないといっても過言ではありません。
つまり、一般セールスの常識からくる誤解やまちがい、あるいは勘違いが原因で、お客様を獲得することができず、売上げも伸び悩んでいたのです。
外交営業で売上げを伸ばしたければ、一般のセールスの常識から離れなれて、クリーニングの外交営業にあったセールス活動をおこなわなければなりません。
「戦うごとに必ず危うし」はなんとしても避けなければなりません。
そのためには、

「一般セールスの常識は、外交営業の非常識」

ここから始めなければならないのです。

 

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